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コラム No.2 商品としての旅行

2009年6月12日

商品としての旅行
 
いざ書き始めてみるとどこから始めていいのか迷います。そもそも「旅行とは何か」とか「人はなぜ旅行するのか」等の根本的なことから書くべきなのかとか考えてしまいます。興味はすごくありますが、そこから始めてしまうと本題になかなか進まないような気がしますので、我慢して「商品としての旅行」というくくりを設けて、考えていくことにしてみます。
 
旅行にはいろいろな種類がありますが、大まかに分けると旅行期間、宿泊するホテルを決めずに放浪するような旅と、旅行期間、宿泊するホテルも予め決められている、パック旅行と言われているものの二つに分けられます。バックパッカーが好む気ままな放浪の旅は商品としての旅行にはなりません。今回のテーマは団体旅行です。これは団体のパック旅行になります。
 
商品としての旅行は、不思議なものです。不思議という言葉が適切であるかどうかはわかりませんが、日常普通に購入している商品とはまったく違うものであることは断言できます。
 
不思議なものと言わせる要素の一つとして、旅行には完成した物質が存在しないことが挙げられます。普段私たちは完成した形のある物質を見て、触れて気に入ったものを購入して暮らしています。ところが、旅行商品にはそれが無いわけです。通販やインターネットを利用する場合も商品自体を直接見たり、触れたりせずに購入しますが、これとも違います。旅行商品は、基本的に事前に見たり触れたりすることができないものです。テレビで見たり、本で読んだり、友人知人から話を聞いたりして、その商品とはこんなものだろうと想像することはできます。その参加者個人の中に存在する想像の世界がその参加者個人にとっての商品になるわけです。当然個人差が存在することになります。
 
土地を買って家を建てる場合、建築家の方と図面を見ながら相談を重ねて造り始めます。完成した家を見ることなく、触れることなく購入することになります。この完成した家(商品)を想像して楽しみにする部分は旅行商品と似ていますが、決定的な違いがあります。家は最終的に完成された物質が残るのに対して、旅行商品は完成された物質が残りません。旅先での写真やビデオが旅行商品の物質として残るものという意見があるかもしれませんが、写真やビデオは完成された物質とは言えないでしょう。せっかく建てた家を写真やビデオで残して、家自体を壊してしまい、その写真やビデオを完成された物質と言う人はいないでしょう。
 
もう一つ旅行商品に関わる不思議なものとして、「時間」があります。旅行商品は、予め決められた期間(時間)内での体験が商品になります。その期間(時間)そのものが商品になっています。また、その期間(時間)は何ヶ月も前に、時には1年も前に決めなければなりません。その決めた期間(時間)は出発間際の週間天気予報を見て、簡単に延期できないシステムになっています。旅行商品はこの予め決めた期間(時間)内に起きる体験と言えます。期間が終わってしまえば、その商品は消滅してしまいます。
 
不思議な要素の最後に、旅行商品は、それはそれは多くの人と物に関与されるということです。これは不思議な世界と言えるでしょう。完成した物質がある商品は、その商品を購入する際に関与するものとして、その商品自体とそれを販売した人ぐらいしかありません。時には不良品に当たることもあれば、販売した人に不実なことを言われることもあるでしょう。でもそれぐらいです。ところが、商品としての旅行には多くの人と物の関与があります。それ自体が旅の楽しみの要素になっているとも言えるかもしれません。有る人はそれを「出会い」と呼んだりします。
 
それでは、旅行に関与する多くの人と物を少し列挙してみましょう。合わせてその人や物に関わる起こりうる出来事も列挙してみます。
 
     旅行の事前案内(募集パンフレット)/最終の案内(日程表や荷札など)— 予定していたフライトに時間変更があり、日程表の時間と変わっている。
     出発当日に集合場所の空港へ向かいます。JR、飛行機などの交通機関を利用します。— JRが人身事故で大幅な遅れ、集合時間に間に合わない。
     添乗員がいます。— 添乗員との相性は大きな要素
     空港でチェックインします。— 航空会社のスタッフの対応もさまざま、特に座席に関する対応は気になります。
     目的地(海外)への飛行機に乗ります。— 時には大幅に遅れることもあります。
     飛行機の中では機内食、映画等のサービスがあります。—- 機内食が配られなかったという信じられないクレームを受けたことがあります。
     目的地(海外)に着いたら、入国審査・通関があります。— 何気ない行為が審査官の注意を引き、入念なチェックを受け嫌な思いをすることもあります。
     現地ガイドがいます。— 添乗員と同様にガイドさんとの相性も大きく影響します。
     現地のホテルへの移動にバスを利用します。— バスが時間通りに来ない、故障して大幅な遅れがある。
     宿泊ホテルがあります。— オーバーブッキングで部屋がないこともありました。
     宿泊する部屋があります。— 部屋に虫がいた
     宿泊する部屋を掃除してくれるハウスキーピングがあります。部屋には、テレビ、シャワーなどがあります。— 部屋に置いていたイヤリングが見つからない。シャワーがでない。
     食事があります。— ウエイターがうっかりコーヒーを服に溢した。
     天候があります。— 天気の良い日ばかりではありません。雨の日もあります。
     同じツアーに参加した人たちがいます。— 参加者同士の揉め事もあります
などなど
 
上記以外にも買い物したときの店員、タクシーの運転手、たまたま飛行機の座席で隣り合わせた人など書き出したらきりがありません。さらに旅行の参加者以外に旅行の運営者にも当然関与する人と物が存在します。
 
ここまで読んでいただければ、商品としての旅行がすべて完璧に全ての人に満足してもらえることは神がかり的であることと理解できるではないでしょうか。運営者はすべてが完璧にいかないことを想定して、いかに臨機応変に対応していくかが腕の見せ所になります。
それでは、次回からその腕の見せ所について紹介していくことにします。